3月使用分(多くは4月請求)の電気・ガス料金が、少し重くなる。
2026年2月26日、電力大手10社と都市ガス大手4社が相次いで料金を発表した。3月に使う分(多くの家庭では翌月に請求が届く)について、電気・ガスともに全社一斉の値上がりとなる。
「また値上がりか」と思う読者は多いだろう。ただ今回の値上がりには、少し立ち止まって理解すべき背景がある。単純に「電気代が高くなった」のではなく、「支えていた補助が薄くなった」という側面が大きいのだ。
どれだけ上がるのか
まず数字を整理しよう。
電力については、大手10社の「規制料金」(国の認可が必要な、いわば標準的な料金プラン)がすべて値上がりする。使用量が平均的な家庭を前提とすると、前月比の上げ幅はおおむね700〜840円だ。
地域ごとの金額(3月使用・翌月請求)は以下のとおり。
| 電力会社 | 3月の料金 | 前月比 |
|---|---|---|
| 北海道電力 | 9,064円 | +700円 |
| 東北電力 | 8,189円 | +817円 |
| 東京電力 | 8,319円 | +822円 |
| 中部電力 | 7,999円 | +840円 |
| 北陸電力 | 7,211円 | +708円 |
| 関西電力 | 7,401円 | +780円 |
| 中国電力 | 7,790円 | +808円 |
| 四国電力 | 7,991円 | +790円 |
| 九州電力 | 7,134円 | +773円 |
| 沖縄電力 | 8,753円 | +814円 |
都市ガスの大手4社も全社で値上がりする。
| ガス会社 | 3月の料金 | 前月比 |
|---|---|---|
| 東京ガス | 5,554円 | +416円 |
| 大阪ガス | 6,103円 | +414円 |
| 東邦ガス | 6,386円 | +402円 |
| 西部ガス | 6,345円 | +317円 |
電気もガスも、上げ幅が揃って見えるのには理由がある。
「値上げ」ではなく「補助の縮小」という話
今回の値上がりの最大の要因は、政府による補助の縮小だ。
政府は2026年1〜3月使用分を対象に「電気・ガス料金支援」という補助制度を実施してきた。仕組みはシンプルで、料金の明細に「値引き」として自動的に反映される(申請は不要)。
しかし3月使用分では、この値引き額が大幅に減る。
- 電気(一般家庭向け):1〜2月は1kWhあたり4.5円引きだったのが、3月は1.5円引きに縮小
- 都市ガス:1〜2月は1㎥あたり18円引きだったのが、3月は6円引きに縮小
「上げ幅700〜840円」のほとんどが、この補助縮小で説明できる。
少し計算してみると分かりやすい。電気の補助は4.5→1.5円/kWhなので、差は3円/kWh。今回の値上げ幅(700〜840円)を3円で割ると、想定使用量は約230〜280kWhになる。これは「平均的な家庭」の電力使用量にほぼ一致する。
つまり今回の「値上がり」の大部分は、電力会社や燃料相場が急変したというより、政府の補助が薄くなった分が表に出てきたのだ。
では、燃料費上昇は本当か
もちろん、補助縮小だけが理由ではない。各社が説明するもう一つの理由、「LNGや石炭などの燃料価格の上昇」も事実として加わっている。
LNG(液化天然ガス)は、日本の電気とガスを支える主要燃料だ。北東アジア向けのLNG価格(JKM:ジャパン・コリア・マーカーと呼ばれる指標)は、冬場の需要増や気温、地政学的な要因によって上下する。足元は上下しやすく、上昇する局面もある、という整理が出ている。
ただし、電気料金の中に含まれる「燃料費調整単価」は、過去の平均輸入価格を一定のタイムラグをもって反映する仕組みになっており、足元の市況がただちに同月の請求に直撃するわけではない。
中期的な見通しについては、米国やカタールなどの増産でLNGの世界供給が増え、平均価格を抑える可能性があるという見立てもある。一方で欧州の寒波や在庫状況によっては、アジア向けLNGの「取り合い」が起きやすい局面もある。短期的には上振れリスクがあるが、中期的には供給増による抑制も期待される、というのが現時点の見取り図だ。
「自由料金プラン」の人も無関係ではない
ここで一点、注意しておきたいことがある。
今回の発表数字は「規制料金」という、国の認可が必要な標準的なプランのものだ。電力自由化以降、多くの家庭が「自由料金プラン」(電力会社や新電力が独自に設定するプラン)に切り替えている。
では自由料金プランの人は影響なし? ——そうではない。
補助制度(値引き)は自由料金プランにも適用されているため、3月使用分からその値引き額が減る点は共通だ。明細の「値引き」欄の数字が小さくなる形で、多かれ少なかれ影響を受ける。
4月以降はどうなる?
報道で繰り返し言及されるのが、4月使用分以降の話だ。
現行の制度では補助の対象は「1〜3月使用分」までで、4月使用分は対象外だ。延長の有無は現時点で公表されていない。補助が完全に終了した場合、3月と同じ理屈で「補助の穴」が料金に反映される可能性がある。
4月の電気・ガス料金がどうなるかは、政府の制度の動向と燃料価格の両方を見ていく必要がある。
詐欺には注意を
最後に、補助制度に関連して政府が注意を促している点も触れておく。
「補助金の受け取りに必要」などと称して個人情報や口座番号を求める詐欺的な連絡が発生する恐れがあるとして、当局が警戒を呼びかけている。補助は申請不要で自動的に料金明細に反映されるため、手続きを求める電話・メール・訪問は詐欺を疑ってほしい。
3月の請求書を受け取るのは4月に入ってからだ。数百円から千円近い上昇幅を目にしたとき、今回の記事を思い出していただければ——その「値上がり」の正体が、少し見えやすくなるはずだ。
(本稿は2026年2月26日付の各社発表および関連情報を基に構成しました。)

