コメが「3週ぶりに値下がり」——それでも5kg 4,000円台が続く主な背景

「コメが値下がりした」というニュースが流れた。

農林水産省が発表した2026年2月のデータによると、2月9日から15日の1週間に全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は、5kgあたり税込4,122円と、前の週より82円下がった。値下がりは3週ぶりだ。

店頭では「全然安くなった気がしない」という受け止め方も出やすい。「下がった」のに「まだ高い」のはなぜか。それを理解するには、価格がどうやって決まり、どんな経路で店頭に届くのかを知っておく必要がある。


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今回の数字を整理する

農林水産省は毎週、全国のスーパー約1,000店のPOS(レジ)データからコメの販売価格を集計して公表している。今回の発表をまとめると次のとおりだ。

  • 全体平均:5kgあたり4,122円(前週比 -82円)
  • 単一銘柄米(産地・品種が1つの銘柄):4,209円(前週比 -85円)。値下がりは4週連続で、2025年7月下旬以来の水準まで下がってきた。
  • ブレンド米など:3,878円(前週比 -69円)

方向としては確かに「下がっている」。ただし、5kgあたり4,000円台という水準自体は変わっていない。

このPOS価格は「レジを通った実際の販売データ」をもとにしており、「いくらで売れたか」の実態を反映しやすい点で、家計の体感に近い数字といえる。

データ系列によって数字が割れることがある

同じ「コメの店頭価格」でも、農水省が公表するKSP-POSのほか、日経POSなど複数の調査系列があり、タイミングによっては一方が下落・他方が上昇と、動きが割れて見えることがある。メディア報道によって数字が異なる場合は、引用元の系列が違う可能性がある。


需給:在庫感は出ても、価格調整は「ゆっくり」になりやすい

コメ市場に関わる関係者の間では、「在庫水準が高まってきたことで、今後さらに価格が下落するのではないか」という見方が出てきている。需要と供給の話だけを聞けば、「在庫が増えれば価格が下がる」のは自然な流れだ。

ただし、コメは主食で需要が急減しにくく、下げ局面でも価格調整は緩やかになりがちだ。また、平均価格は「銘柄米の構成比」や「売れ筋の偏り」にも左右される。在庫が増えても、消費者が銘柄米を選ぶ傾向が続けば、平均価格は下がりにくい。今回のデータでも、ブレンド米より銘柄米の方が価格水準が高い。


流通:仕入れのタイムラグとコストが、値下げの速度を鈍らせる

農家から消費者の手元にコメが届くまでには、集荷業者→卸売業者→小売業者というルートをたどる。そのどこかの段階で「高い時期に仕入れた在庫」を抱えていると、それが売り切れるまでは値下げしにくい。値下げすれば、その分だけ損失が出るからだ。

生産現場や卸段階では価格が落ち着いてきたとしても、小売の棚が新しい在庫に切り替わるまでの間は、店頭価格は高いまま続きやすい。

加えて、精米・包装・物流などの付随コストは短期で大きく下がりにくい。需給が緩んでも、流通過程で積み上がったコストが一定の下支えとして働く。

なお、過去には政府が備蓄米放出を表明しても「生産・集荷段階から小売に届くまでの流通の目詰まり」が課題として指摘されており、農水省の会見でも「目詰まりの解消」が言及されてきた経緯がある。


政策:小売価格の「統制」ではなく、需給と流通の安定化が中心

政府が小売価格を直接決める仕組みはない。一方で、需給の見通しや流通の安定化を通じて、価格形成に間接的な影響を与える余地はある。

代表的な手段が2つある。1つは、農水省が毎週POS価格を発表するような「需給の見える化」。もう1つは、極端な品薄や急騰が起きたときに備蓄米を放出するなど、流通の混乱を緩和する対応だ。農水省のデータでも、備蓄米の流通が価格の低下に寄与した局面があるとされている。

今回のような週次データの公表は、値動きの方向性を確認し、過度な不安や混乱を抑える意味でも重要な役割を担っている。


今後の見どころ:下げが続くかは「棚の入れ替わり」に左右される

市場関係者の間では、在庫の厚い局面で決算期などが重なると、在庫圧縮のために損切り的な値下げが連鎖しやすいという見方もある。

店頭価格が本格的に下がるとすれば、次のような順序が考えられる。

  1. 高値で仕入れた在庫が薄まってくる
  2. より安い単価で仕入れた新しい在庫が棚を埋めていく
  3. スーパーが値付けを見直し、特売や価格改定が広がる

今回の82円下落は「下向きの方向」を示してはいる。ただし4,000円台からの脱却は、在庫の入れ替わりが進むスピード次第となる。平均価格が4,000円を下回るのか、それとも小幅な上下にとどまるのかが、次の焦点だ。


まとめ:「下がった」と「まだ高い」は矛盾しない

今週のコメ価格は確かに前週より下がった。しかしそれは、4,000円超という高値圏の中での82円の動きだ。

「在庫が増えているのに、なぜ下がらないのか」という問いへの答えは1つではない。需給の調整が緩やかなこと、流通のタイムラグとコスト、政策が直接価格を操作する仕組みではないこと——これらが絡み合っているため、価格は需給だけでは動かない。

今後の農水省の週次発表で、下げのペースと方向を引き続き確認したい。


用語メモ

  • POSデータ:レジを通った実際の販売実績データ。「実際にいくらで売れたか」を反映する。農水省はKSP-POSや日経POSなど複数の系列を公表している。
  • 単一銘柄米:産地と品種が単一の銘柄コメ(例:○○県産コシヒカリなど)。
  • ブレンド米:複数の産地・品種を混合したコメ。単一銘柄米に比べて価格は低めだが、全体高の局面ではこちらも上がりやすい。
  • 備蓄米:政府が需給調整のために保有するコメ。品薄・急騰時に市場へ放出する手段のひとつ。
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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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