【食料品の消費税がゼロになる?】IMFが「財源と設計」を求めた理由

■この記事のポイント
IMFの論点は「減税するな」という単純な否定ではない。食料品の消費税を2年間ゼロにする案について、消費税が歳入の土台である以上、税収の穴をどう埋めるのか(財源)と、期限や対象がぶれない制度設計を示す必要がある――というメッセージだ。

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【スーパーのレジで感じる「じわじわ」した重さ】

野菜、肉、調味料。買うものは大きく変わっていないのに、会計の数字だけが上がっていく。ここ数年の食料品の値上がりは、家計に静かな圧力をかけ続けてきた。円安、エネルギー高、人件費の上昇などが重なり、とくに低中所得層ほど負担感が強くなりやすい。

こうした中で注目されているのが、「食料品の消費税を2年間ゼロにする」という減税案だ。

【物価高に立ち向かう「2年間ゼロ」という約束】

■減税案の概要

現在、食料品(酒類・外食を除く)には軽減税率8%が適用されている。これを2年間ゼロにして、物価高で増えた家計負担を直接軽くしようというのが、この政策の狙いだ。

■家計への効果は分かりやすい

たとえば対象となる食料品の購入が月5万円規模なら、単純計算で月4,000円程度の負担軽減になる(実際は家庭の購入内容によって差がある)。分かりやすく、幅広い層に届く支援策として注目される理由はここにある。

【IMFが言及した理由——焦点は「財源」と「制度設計」】

■IMFとは何者か

IMF(国際通貨基金)は、各国の経済・財政の安定を点検し、年次協議(Article IV)を通じて助言を行う国際機関だ。今回の発言も、その枠組みの中で示された見解である。

■IMFが見ている「日本財政の前提」

IMFは、日本の財政指標に改善が見られる一方で、政府の債務水準は依然として高い、と指摘している。将来の自然災害など不測の事態に備える「バッファー(余力)」を確保するため、財政規律を重視すべきだ、というのが基本姿勢だ。

■今回の減税案へのコメントの核心

そのうえでIMFは、食料品の消費税を2年間ゼロにする案について「消費税は歳入に極めて重要で、財政リスクを抑えなければならない。どのように財源を確保するのか見ていく必要がある」と述べた。
論点は「減税の是非」だけではなく、「税収の穴をどう埋めるのか」「2年で本当に終わる設計か」といった設計面に重心がある。

【減税で減る税収を埋める3つの選択肢】

■財源問題の構造

食料品の消費税をゼロにすれば、国の税収はその分減る。その穴を埋める手段は、現実的には大きく3つだ。

① 別の税で補う(増税)
所得税や法人税など、別の税を引き上げて補う。国全体の収入は維持できるが、別の形での負担増になる。

② 支出を減らす(歳出カット)
社会保障、公共事業、教育などの支出を抑えて捻出する。財源は作れるが、削る分野をめぐる調整が難しい。

③ 国債で補う(借金の増加)
国債発行で不足分を賄う。短期的には実行しやすい一方、借金が増えれば将来の利払い負担が重くなる。金利が上がる局面では、このコスト増がより意識される。

■IMFが「財源」にこだわる理由

IMFが注視するのは、穴埋めが③(国債)に偏ると、債務水準が高い国ほど将来のリスクが積み上がりやすい、という点だ。加えて、どの手段を選ぶとしても、説明が曖昧なままだと市場や国民の信頼を損ねやすい。だからこそ「具体的な手当て」を求める。

【「広く薄く」か「必要な人に厚く」か——支援の届け方】

■一律減税の特徴と弱点

消費税を一律でゼロにすると、対象の買い物をする人すべてに効果が出る。その反面、購入量が多いほど恩恵も大きくなるため、高所得層にも同様に(場合によってはより大きく)効果が及ぶ。支援が「広く薄く」になりやすいという構造がある。

■IMFが触れた代案:給付付き税額控除

IMFは、所得に応じて給付や減税を組み合わせる「給付付き税額控除」が、適切に設計されればターゲットを絞った家計支援につながる、という考えも示している。
ただし、対象者の把握、給付までのタイムラグ、事務コストなど、制度として動かすまでのハードルは低くない。一律減税の「分かりやすさ」と、ターゲット支援の「効率性」はしばしばトレードオフになる。

【「改善してきた」は「問題が消えた」ではない——財政の見取り図】

■プライマリーバランスの改善とは

IMFは、日本の財政について「改善が見られる」とも評価した。基礎的財政収支(プライマリーバランス)――利払いを除いた収支――の赤字が縮小してきた、という意味だ。税収の好調などが背景にある。

■それでも債務水準の高さは続く

ただし、これは「借金そのものが減った」ことを直接意味しない。政府債務残高の水準が高いままであれば、金利が上がる局面では利払い費が増えやすい。だからこそIMFは、非常時に備えるバッファーを確保しつつ、財政規律を重視する必要があると強調する。
「家計簿の収支が少しマシになった」ことと、「ローン残高が小さくなった」ことは別の話なのだ。

【まとめ 争点は「減税の善悪」より「財源」と「設計」】

■問われている3つのポイント

食料品の消費税を2年間ゼロにする案は、物価高で苦しむ家計を支える手段として分かりやすい。一方で、次の3点が同時に問われる。

・減税で減る税収を、どの手段で、どの規模で手当てするのか
・2年という期限が、制度として本当に守られる設計か(恒久化しないか)
・支援が必要な層に十分届く形になっているか(「広く薄く」になりすぎないか)

■IMFのメッセージをどう読むか

IMFの主張の重心は、「減税反対」と断じることではなく、「財源の手当てと制度設計を具体的に示すことが不可欠」という点にある。
政策を評価するときは、目に見える負担軽減だけでなく、その裏側にある財源と持続性の説明にも注目する必要がある。

参考:IMF対日年次協議(Article IV)関連見解(2026年2月)、NHK報道(2026年2月18日)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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