【解説】米EU関税交渉が15%で妥結──ドイツの孤立と譲歩、欧州車業界の行方は?

2025年7月27日、アメリカと欧州連合(EU)は関税交渉で正式に合意し、自動車および部品にかかる関税が現行の27.5%から15%に引き下げられることとなった。8月1日から発効予定だった30%の相互関税が回避され、米欧間の貿易衝突はひとまず回避された形だ。

ドイツ車メーカーの「特例措置」は棚上げ

交渉の過程では、ドイツのBMWやメルセデス・ベンツなどが米国への自動車輸出に対する「相殺制度(オフセット・メカニズム)」の導入を求めていた。これは、米国内で生産し輸出する新車の量に応じて、輸入関税を割り引くという仕組みである。

しかし、フランスやイタリアを中心とする他のEU加盟国はこの特例措置に強く反発。欧州ステランティス(プジョー・フィアット等)やルノーなどは米国向け輸出が少なく、自国産業に不利との懸念を示した。結果としてドイツはEU内で孤立し、最終的に特例措置を「保留」とし、関税の早期合意を優先する方針に転じた。

合意内容:自動車・部品含め15%、対米投資も約束

トランプ大統領とフォンデアライエン欧州委員長による合意は、自動車に限らず、医薬品・半導体など広範な品目に関税15%が適用されるとされる。ただし、対象品目について米欧間で説明が一部食い違っており、詳細は今後数週間で明らかになる見通しだ。

また、EUは米国からのエネルギーを3年間で総額7500億ドル(約110兆円)購入する計画に加え、6000億ドル超の対米投資を約束。この中には防衛装備品の購入も含まれるが、具体的な内容は明かされていない。

関税引き下げによる企業への影響

欧州車メーカーにとって、27.5%の関税は大きな負担であり、フォルクスワーゲン(VW)は13億ユーロ、ステランティスは3億ユーロの追加コストを計上していた。15%への引き下げは負担軽減となる一方、自動車部品にも15%関税が適用される点が新たな課題として残る。

たとえば、メルセデス・ベンツは米国で車を組み立てる際も、エンジンなど多くの部品を欧州から輸入しており、全体で見れば関税コストは依然として重い。関税の影響は企業業績にも表れており、VWは2025年上期の利益が前年同期比で37%減少している。

特例措置の今後と企業戦略

特例措置は交渉カードからは外れたが、完全に諦めたわけではない。VWは「数十億ドル規模の追加投資パッケージ」を示唆し、政治合意後の企業レベルの交渉で何らかの優遇措置を得る構えを見せている。

独メッツラー銀行のアナリストによれば、相殺制度は「国内生産の回帰」というトランプ政権の通商政策とも合致する。今後は企業単位のインセンティブとして再浮上する可能性もある。

背景にある「日米合意」の影響と他国の動向

今回の米欧合意は、7月22日に日本と米国が15%関税で合意したことも交渉加速の一因とされている。米国は8月1日の発動を前に複数国と交渉を続けており、トランプ氏は「さらに3〜4カ国と合意を進める」と明言。今後は中国、韓国、インド、カナダなどが焦点となる。


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