How can we bring science and business closer together? |Deciphering the "Interim Summary" of Innovation Policy

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【はじめに】なぜ今、イノベーション政策の「中間とりまとめ」が必要なのか?

2025年4月17日発表──日本の未来を左右する“イノベーション政策”の分岐点

経済産業省の審議会が発表した最新報告書、
**『産業構造審議会 イノベーション小委員会 中間とりまとめ(2025年4月17日)』**は、
今後の日本の「成長」と「知の循環」を左右する重要なメッセージを含んでいます。

副題に掲げられたのは、

~「科学とビジネスの近接化」時代のイノベーション政策~

この言葉が象徴するのは、日本の研究と社会の距離が、いまだに遠すぎるという現実Are.


報告書が作成された背景と目的

✅ 複合的に重なった日本の課題
課題領域概要
📉 研究力の低下国際共著率や被引用数などがOECD諸国で下位水準に後退
🧪 大学改革の遅れ学長の裁量不足、組織の縦割り、資金の硬直性など構造的障害
🚀 スタートアップの弱さIPO偏重、M&A未成熟、国際展開力不足
🌍 グローバル接続の希薄さ研究・起業・人材流動性の面で世界と断絶

こうした課題が複雑に絡み合う中、報告書は明確にこう提言します:

🔁 科学・ビジネス・人材・制度の“断絶”を乗り越え、社会価値に転換する仕組みを再設計せよ


報告書が目指す3つの方向性

この「中間とりまとめ」が掲げるのは、以下の3つの構造転換です:

  1. ⛓️ 分断の解消
     例:研究と社会、大学と産業界、国内と世界との壁を崩す
  2. 📈 成果の加速
     例:大学の経営改革、知財活用、スタートアップ育成など実装を意識した制度整備
  3. 🌍 グローバル標準との接続
     例:国際ルール形成、共同研究ネットワーク、海外VCとの資金循環

象徴的な具体例も数多く紹介

報告書では、実例を通じて“変化の芽”も紹介されています:

  • 🎓 東北大学の「本部戦略経営モデル」──予算の10%を全学配分
  • 🏫 東京科学大学の創設──分野融合型の新たな大学像
  • 🌍 名古屋大学のBLOCK71進出──NUSとの国際連携
  • 📉 日本のM&A文化の遅れと、ディズニー×ピクサーやFacebook×Instagramの成功事例との対比
    ※注記:「ディズニー等の事例」は報告書出典ではない「補足例」です。

これらの例を通じて、報告書は「理想」ではなく「現場」に基づいた政策の再設計を目指していることがわかります。

追記:政府の役割(公共調達・制度支援)に関する補足予定。


本記事の位置づけと目的

この中間とりまとめは、政策関係者だけでなく、大学関係者、起業家、投資家、研究者、学生…
あらゆる“知に関わる人”に向けられたメッセージAre.

本記事では、報告書が語る論点を:

  • わかりやすく解説し
  • 世界や実例と対比しながら
  • 日本の進むべき道筋を“読者目線”で考察

していきます。

✏️ 「科学とビジネスの近接化」は、国家だけでなく、私たち一人ひとりの選択にも関わるキーワードなのです。


第1章:イノベーション政策は“分断の解消”へ

「科学」と「社会」がつながらない日本の構造的課題

本報告書の冒頭で最も強調されているのは、“分断”の構造的課題Are.
ここで言う「分断」とは、単に制度や予算の壁を指すのではなく、以下のような知と社会の接続不全を広く含んでいます:

  • 研究成果と産業応用の“断絶”

  • 大学とスタートアップの“すれ違い”

  • 国内の制度と国際的なビジネス環境の“非整合”

この“分断”こそが、日本のイノベーション政策が成果に結びつきにくい最大の要因だと、報告書は指摘します。


研究と産業が乖離した構造とは?

日本では、世界トップ水準の基礎研究が行われているにもかかわらず、それが社会課題の解決やビジネス創出に結びつかないことが多々あります。

例:

  • ノーベル賞級の発見があっても、事業化まで長期間を要するケースも少なくない。

  • 大学発スタートアップの数は増えているが、実用化率や資金調達規模では米欧に大きく劣る

これは、知の創出(科学)とその活用(ビジネス)の間に「資金配分や人材流動性の不足など」が存在しているためです。


報告書が指摘する3つの“分断領域”

報告書では、特に次の3つの断絶を構造的課題として挙げています:

① 科学とビジネスの分断

  • 大学の成果が「論文止まり」になりがちで、産業界との接続が弱い

  • 知財・人材・予算などが“別世界”で管理されている

② 教育・研究と経営の分断

  • 教員・研究者がマネジメントや事業化支援のリテラシーを持ちにくい構造

  • 大学経営(本部)と研究部門が別の論理で動くケースが多い

③ 国内制度とグローバル実務の分断

  • スタートアップにとって、海外投資家との契約慣行が乖離している

  • 国際的な法制度や技術標準に日本の制度設計が追いついていない


世界の潮流は「接続型イノベーション」へ

このような分断構造を克服するため、欧米やアジアの一部では「接続型エコシステム」が急速に整備されています。

例:

  • 米国:大学にTech Transfer Office(技術移転部門)を設け、産学連携を常時支援

  • シンガポール:BLOCK71で大学・企業・投資家・政府が日常的に“場”を共有

  • スウェーデン:大学の研究成果を社会に迅速に橋渡しする中間組織が活発

日本にも同様の仕組みが必要である、という認識が本報告書の基盤にあります。


解決に向けた基本方向性

報告書では、“分断の解消”に向けた方向性として、以下が強調されています:

解決の方向 substance
🚪 組織の壁を越える仕組み 部局横断の予算配分、融合分野への戦略投資
💬 文化・リテラシーの接続 研究者に経営視点、企業人に研究知識を橋渡し
🌏 国際接続の標準化 グローバル契約、英語オペレーション、人材流動性の確保

🔁 イノベーションは「断絶の上に成り立つ」ものではなく、「接続の上に咲く」もの。
この構造転換こそが、本報告書の核心です。


次章では、こうした分断の中心にある“大学”に焦点を当て、**大学に何が求められているのか?**を深掘りしていきます。


第2章:大学は何を求められているのか?

なぜ今「大学改革」が焦点に?

今回の報告書では、「大学」に関する改革提言が最も多くのページを割いています。
それは裏を返せば、大学が“イノベーションのボトルネック”にも、“起点”にもなり得るという認識が政府内でも共有されているからです。

科学とビジネスの“近接化”を実現するためには、大学の機能を**「知を生み出す場」から「社会と接続するエンジン」へと変革**することが不可欠だと報告書は強調しています。


日本の大学が抱える3つの構造的課題

報告書では、日本の大学が直面している課題を次のように整理しています。

① 経営力の不足と学長の権限の弱さ

  • 「教授会中心主義」「講座制」により、学長が全学を横断する戦略を立てにくい

  • 学長の裁量で使える予算(裁量経費)が少なく、大学を“戦略的に経営する”体制が未整備

② 研究の“縦割り”と融合力の欠如

  • 学部や研究科ごとに閉じた制度が多く、学際的な研究が進みにくい

  • 研究テーマも既存分野に集中しやすく、社会課題との接点が希薄

③ 産学連携の不活性と出口戦略の乏しさ

  • 企業からの研究資金は他国と比べて極めて少ない(OECD水準と比較し低い)

  • スタートアップ創出は増えてきたが、経営人材やグローバル展開の支援が追いついていない


学長の裁量を強化せよ

報告書で繰り返し示されているキーワードが「学長の裁量経費」です。
これは、大学が全体最適で予算や人材配置を行えるようにするための重要な仕組みです。

✅ 海外の大学では、学長が“CEO的存在”として経営の全体戦略をリード
✅ 対して日本では、各学部の“横並び”や“公平主義”が優先され、迅速な意思決定が困難

【事例】東北大学の戦略的予算制度「10%ルール」

  • 研究費や外部資金の約10%を本部でプールし、大学全体の戦略投資に活用

  • 若手研究者や新領域プロジェクトへ集中的に投資し、“全体最適”の運営を実現

このような「戦略的ガバナンスモデル」は、今後の大学改革の先行事例として注目されています。


専門の深化 × 分野横断が鍵

日本の大学では、「分野を極める」ことには強みがありますが、「分野をつなぐ」ことには制度的な限界があります。

しかし、イノベーション創出には両方が不可欠です。

要素 必要な力
🔬 専門性の蓄積 高度な知識・技術の“種”を生む基盤
🔗 横断性・融合 社会課題と接続し、“実装”に至るための視野と連携力

💡 報告書は、「深さ」と「広さ」を戦略的に組み合わせる大学経営が不可欠だと提言しています。

【事例】東京科学大学(東工大 × 医科歯科大の統合)

  • 物理・工学・生命科学・医療が融合した分野横断型の大学設計

  • 大学そのものを「社会課題に挑む装置」として再定義するモデルケース


スタートアップとの連携・人材循環の促進

  • 大学発スタートアップは2023年時点で4,288社に達し、数は増加傾向

  • しかし、「経営人材とのマッチングの弱さ」「出口戦略がIPOに偏重」など、質の面では課題が残る

提言:

  • 経営者・実務家の大学内登用(クロスアポイントメントなど)の活用

  • スタートアップ支援組織の専門人材の処遇改善と常設化

  • 海外大学のように、大学が「起業の母体」となる文化の定着


世界との比較で見えてくる“経営体としての大学”

海外(特に米国)では、大学は単なる教育機関ではなく、知を価値に変える“企業体”としての性格を持ちます

  • 学長=経営者(President/CEO)

  • 財源は授業料+寄付+知財+企業連携で分散

  • 起業、寄付、成果連動予算が大学全体に循環する仕組み

日本の大学も、今後は**「社会に価値を届ける存在」として再定義されることが求められている**と、報告書は強く主張しています。


まとめ:大学は「知を生み出す場」から「価値創出の主役」へ

日本の大学が進化するには、

  • 学長に戦略権限を持たせる「経営力の強化」

  • 縦割りを越えた「融合型研究支援」

  • 知財・人材・スタートアップへの「出口設計」

といった総合的な変革が不可欠です。

✏️ 大学はもはや“研究の場”だけではなく、“社会と接続するプラットフォーム”としての自覚と構造改革が求められています。


次章では、大学や研究機関の成果が実際に“社会実装”されるための出口戦略、特にスタートアップとM&A文化の未成熟問題について深掘りしていきます。


第3章:スタートアップの“出口なき成長”をどう変えるか?

「起業=ゴール」では成長できない日本の現状

日本でも近年、大学発スタートアップや地方創生型の起業支援が進み、
スタートアップの“数”は確実に増加It does.
しかし、その一方で「どこで成長の壁にぶつかるか」も明確になりつつあります。

それが本章のキーワードでもある「出口戦略の不在」、つまり:

「IPOに偏り、M&Aやグローバル展開といった“次の成長ステージ”への移行が困難である」という問題です。


日本に欠けているのは“多様なExitの選択肢”

✅ IPO一択の構造

  • 日本では、スタートアップの成功モデルが**「IPO(新規上場)で資金調達して終了」**に偏りがち

  • M&Aによるスケーリングや事業統合が社会的にも文化的にも根付いていない

✅ 資本市場の性質と制度的ハードル

  • 上場後は短期業績志向になりやすく、研究開発や人材投資が後回しに

  • M&Aを進めようにも、税制・法制・慣習上の障壁が多く、“買収慣れ”していない企業が大半


報告書の問題提起:「出口が狭すぎる国、日本」

2025年4月の中間とりまとめは、こう明言しています:

「日本ではM&Aなどスタートアップの出口が限られ、欧米に比べ規模拡大に壁がある」

つまり、日本は起業から初期成長までは対応できても、成長の“次の段階”に制度と文化が追いついていないのです。


なぜ日本でM&Aが根付かなかったのか?

この背景には、文化・法制度・組織観の違いが複雑に絡んでいます。

観点 substance
🧠 文化面 買収=敗北、敵対というイメージが根強く、被買収側の不安が大きい
⚖️ 制度面 株式の持ち合い・社内慣習・PMI(統合設計)の遅れが交渉の障壁に
💼 経営視点 「必要な技術は内製」「人材は終身雇用」が根付き、外部獲得への意識が低い

海外の成功事例に学ぶ“出口の多様性”

報告書では直接触れられていませんが、海外ではM&Aを含めた柔軟な出口戦略が成長モデルの一部として完全に定着しています。

【補足:成功事例1】ディズニー × ピクサー(米国)

  • 買収後もピクサーの経営・文化を尊重し、ディズニーの販路と融合

  • PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)の成功例として高く評価

【補足:成功事例2】Facebook × Instagram(米国)

  • 創業間もないInstagramを10億ドルで買収

  • サービス独立性を保ちつつ、広告・技術基盤を共有することでスケーリングに成功

    ディズニー、Facebook等の事例は「補足例です。」

✅ 両事例とも、**「吸収」ではなく「接続と強化」**という買収後の戦略が共通項


日本の失敗事例に見るPMI(統合設計)の難しさ

【失敗事例】日産 × ルノー

  • 買収された側(日産)の“自主性喪失感”と統合後の対立が長期的に尾を引き、

  • 最終的にアライアンス関係そのものが機能不全に

🧩 教訓:買収の成功は「買った後の設計(PMI)」にかかっている


報告書が提言する「出口戦略の強化」

以下のような施策が提案されています:

提言 substance
🧭 スタートアップによるM&Aの促進 他社を買う側としての成長戦略の支援
📈 上場後の成長支援 R&D・グローバル展開への再投資を可能にする制度改革
🧑‍💼 経営人材とのマッチング支援 スタートアップ×プロ経営者をつなぐ仕組みづくり
🏛️ 政府・自治体の調達強化 公共セクターがスタートアップの“最初の顧客”となる

BLOCK71のような“出口設計付き支援モデル”の必要性

シンガポールのBLOCK71は、起業前後から海外展開・M&A・国際連携・VC接続までの仕組みを内包したスタートアップ拠点Are.

  • 名古屋大学やTISなど日本の機関も連携を開始

  • 大学、政府、民間VCが一体となって**「出口を見据えた支援」を提供**

📌 日本でもSTATION Ai(愛知県)など、同様のモデルが始まりつつあるが、本格運用はこれから


まとめ:日本のスタートアップ支援は「出口設計」から再構築を

報告書が示すのは、次のようなメッセージです:

🗝️ 「起業すること」よりも、「どのように成長し、社会に根を張るか」が真の課題である。
🚪 そのためには、“出口戦略”を中心に据えたスタートアップ・エコシステムの再構築が必要だ。


次章では、日本がもっとも苦手とする分野――世界との“接続力”の弱さとグローバル共同研究の課題について、データと事例を交えて深掘りしていきます。


第4章:“世界とつながる力”が決定的に足りない日本

「内向き志向」がイノベーションのブレーキに

今回の報告書では、日本のイノベーションが“国内で完結しすぎている”ことが深刻な課題として浮き彫りになっています。

特に問題視されているのが:

  • 国際共同研究の少なさ

  • 海外人材・研究者の受け入れの弱さ

  • スタートアップのグローバル展開力の欠如

という、“世界との接続力”の脆弱さAre.

🔍 日本の制度・文化・インフラは、依然として「国内市場前提」で設計されており、グローバル連携の発想が根本的に不足しているのです。


日本の“国際共著率”は先進国中で最低水準「OECD等による」

国際比較で象徴的なのが、「国際共著論文比率」のデータです。

  • 日本の国際共著率は「OECD等によれば」約30%前後

  • 比較すると:

    • 英国:約60%

    • ドイツ:約55%

    • 韓国:約45%

    • シンガポール:約90%超(大学・研究機関で海外人材中心)

このデータは、日本の研究者が国際的ネットワークの中で活動する機会が少ないことを物語っています。

📉 結果として、日本の研究は世界の潮流や標準化プロジェクトから置いていかれやすくなり、知の影響力が弱まっているのが現状です。


海外人材が「定着しにくい国」ニッポン

報告書では、研究人材の国際流動性の欠如も指摘されています。

課題 実態
🧑‍🔬 外国人教員の少なさ 東京大学でも外国人教員の比率は約10%未満
🏫 英語プログラムの限界 修士・博士課程での英語コースが限定的、研究室文化も日本語中心
🏠 定着支援の乏しさ 住宅・ビザ・家族サポートの制度が不十分で、優秀な研究者が数年で帰国する傾向

スタートアップも“内向き設計”が主流

スタートアップにおいても、最初から世界市場を狙う「ボーン・グローバル型」起業が少ないことが課題です。

比較 substance
日本型 まず国内で実績 → 余力があれば海外展開(後手)
海外型(米・アジア) 最初から英語、複数通貨、海外投資家対応を前提に設計

これにより、日本のスタートアップは「資本調達」「スケーリング」「国際競争」すべてで後れを取る傾向にあります。


世界との“接続”を阻む制度的な壁

  • 国内向けに最適化された契約様式・規制が、国際的な商慣習や投資契約と噛み合わない

  • 国際共同研究での知財共有・成果配分ルールが不明瞭

  • 越境でのスタートアップ支援資金の制度上の使いづらさ

📌 日本の制度は「外とつながる」前提ではなく、「中で回す」前提で作られてきたため、世界標準との“接続ミス”が多発It does.


報告書の提言:世界と“つながる設計”へ転換を

報告書では、次のような方向性を示しています。

政策方向 substance
🌍 国際共同研究の強化 海外研究機関との連携プログラム支援、若手研究者の派遣促進
🧳 海外人材の流動化支援 ビザ緩和、英語ベース運営、研究インフラ整備
📡 グローバルVC・拠点との連携 海外投資家やアクセラレーターとの接続支援(例:BLOCK71)
📖 国際ルール形成への参画 技術標準化、契約ルール、人材評価の国際整合性を高める

海外拠点と“つながる大学”の事例も登場

報告書では、名古屋大学がシンガポールのBLOCK71内に拠点を開設した事例も取り上げられています。

  • 海外スタートアップ支援施設の中に日本の大学が入居

  • 現地のVCや企業と常時接続する“知の出島”モデル

  • 他大学にも展開可能な国際連携拠点のロールモデルに

💡 こうした“ハブへの接続”こそ、日本に不足していた視点であり、今後の主流になる可能性があります。


まとめ:“つながる設計”が、これからの常識になる

✈️ 日本のイノベーションは、制度も意識も“島国型”から脱する必要があります。
🌐 世界とつながり、学び合い、共にルールを作る「開かれた知のエコシステム」こそ、今後の鍵を握ります。


次章では、この“つながる設計”を支える制度的基盤として不可欠な、
デジタル化・知財戦略・コーポレートガバナンスの課題と対応について詳しく解説していきます。


第5章:デジタル化・知財・ガバナンスが“開かれた知”を支える

つながる社会の「基盤整備」としての政策課題

報告書の後半では、イノベーションの「制度インフラ」そのものの変革が提言されています。
それが、以下の3つのキーワードです:

  • デジタル化

  • 知財活用

  • コーポレートガバナンス

この章では、イノベーション政策を“制度”から支える視点として、これらがどのように連動して機能すべきかが論じられています。


デジタル社会への適応:研究・起業の前提が変わる

現代のイノベーションは、もはや「モノの開発」ではなく、「デジタルインフラの整備が価値創出の基盤に」が中核になりつつあります。

報告書が注目するのは、以下のような変化です:

  • AI、量子、バイオなど、超デジタル依存型の研究領域の増加

  • デジタル越境取引(ライセンス、データ、サービス)の常態化

  • 海外との協調的なデータガバナンスとルール形成の必要性

提言:

  • 国家戦略としての研究データ基盤の整備

  • デジタルプラットフォーム事業者との連携ルール整備

  • 研究倫理・AI開発ルールの国際調和への積極的関与

📡 デジタル化は「ツール」ではなく、「制度と価値をつなぐ前提」になっていることが前提です。


知財は“書棚に眠らせず、事業に活かす”時代へ

報告書では、知的財産のあり方も大きな転換点にあると指摘しています。
従来の「特許=成果の証」ではなく、「知財=事業資産・市場戦略」としての活用が不可欠です。

現状の課題:

課題 substance
🧾 知財が活用されていない 特許は多いが、ライセンス収入や事業活用が少ない
🏫 大学発知財の“活用不足” 実用化・商業化への支援不足。研究者と企業の距離が遠い
⚖️ 制度の硬直性 法律や実務がデジタル・グローバルなビジネスに対応しきれていない

提言:

  • 大学・スタートアップ向けの知財マネジメント人材の育成

  • デジタル時代に対応した知財制度(AI生成物・ソフト等)の見直し

  • 「創出 → 登録 → 活用」までを一気通貫で支援する体制の構築

💡 知財は「棚にしまうもの」ではなく、「市場で回すもの」へ──。


ガバナンスは“成長対話”を支える仕組みに

コーポレートガバナンスもまた、単なる企業統治ではなく、イノベーションの加速装置として再定義されつつあります。

報告書が問題視する点:

  • 「ROE重視」が過度に働き、研究開発や人的投資が抑制されがち

  • 株主と経営の対話が短期的な指標中心で、長期成長視点に乏しい

  • イノベーションの源泉となる無形資産(知・人・関係性)に投資しづらい構造

解決に向けた視点:

方向性 substance
🧭 成長戦略ベースの対話 投資家との「研究・技術・人材育成」軸での対話促進
👥 ガバナンス人材の多様化 社外取締役に研究・技術・スタートアップ経験者の登用を進める
📊 情報開示の進化 財務以外の「知的資産・研究戦略」も企業価値評価に組み込む

安全保障とオープンイノベーションの“両立”へ

最後に、報告書は非常に重要な問題にも触れています。それが:

「経済安全保障」と「国際連携」の両立可能性

背景:

  • 地政学リスクの高まりにより、技術流出・研究開発の規制が強化される流れ

  • 一方で、イノベーションは国際共同で進めなければ成立しない

提言:

  • 機微技術を管理するガイドラインの明確化

  • オープンイノベーションと国家的安全保障戦略との整合性ある運用

  • 安全保障と産学連携の**「二項対立」ではなく「統合設計」**の視点

🧩 「守る知」と「開く知」のバランスが、次世代の技術開発を左右します。


まとめ:制度がイノベーションの“土台”をつくる

報告書が示すメッセージは明確です:

🚀 イノベーションを加速するのは、科学者だけでも起業家だけでもない。
🛠️ それを支える「制度」「ルール」「文化」こそが、社会の変化の加速度を決める。


次のセクション(結び)では、報告書全体を振り返りながら、読者が今後の日本のイノベーションとどう向き合うか──その視点を提示していきます。


結び:知がつながる時代へ──私たちにできること

分断から“接続”へ──日本のイノベーション政策は転機に立っている

今回の報告書
『産業構造審議会 イノベーション小委員会 中間とりまとめ(2025年4月17日)』は、
単なる制度改革の羅列ではなく、「知をどう社会につなげるか」という本質的な問い
を私たちに投げかけています。

これまで日本が抱えてきた課題は明確です:

  • 科学とビジネスの“分断”

  • 大学の経営力と社会接続力の不足

  • 起業の「出口」が狭く成長が続かない構造

  • グローバル連携への弱さ

  • 制度・知財・ガバナンスが変化に追いついていない現状

しかし、本報告書はそのひとつひとつに、制度と人を“つなぎ直す”具体的な処方箋を提示しています。


未来は、個人や現場の“接続力”から始まる

この「中間とりまとめ」は、政府や企業だけのためのものではありません。
大学で研究に向き合う学生、スタートアップを立ち上げようとする起業家、企業で新しい事業に挑戦するビジネスパーソン…

💬 すべての“知に関わる人”が、「社会とつながる意識」を持つことからイノベーションは始まります。


本記事の振り返り:5つの論点

キーワード gist
第1章 分断の解消 科学・ビジネス・制度の“断絶”がイノベーションの壁になっている
第2章 大学改革 学長の経営力と融合型研究が大学の社会接続力を左右する
第3章 スタートアップと出口戦略 IPO一辺倒から、M&Aや海外展開を見据えた成長設計へ
第4章 グローバル連携 国際共著・越境起業・ルール形成で“世界とつながる”力の再構築
第5章 制度基盤の整備 デジタル・知財・ガバナンスが、知の社会実装を支える“土台”に

最後に:知を開き、つなぐ社会へ

私たちが向かうべき未来とは何か?
報告書はその方向を、静かに、しかし明確にこう示しています。

🌱 科学が閉じたままでは、社会は変わらない。
🤝 企業が孤立していては、知は循環しない。
🧭 「近接化」された知のネットワークこそが、イノベーションの起点となる。


読者の皆さまへ

この記事を通じて、日本のイノベーション政策の現状と課題、そしてこれからの可能性を一緒に見つめていただけたなら幸いです。

✨ 変革の起点は、政策ではなく、現場から始まる小さな“接続の意志”かもしれません。

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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